桜の花びらの落ちるスピードは、見る人の心次第。

最近、「秒速５センチメートル」を検索してこのブログに到達された方が多いようです。
その中でも「秒速５センチメートル　あなたはきっと大丈夫」については４年以上前の記事ながらコンスタントにお客様が来てくださっているようです。

自分のエントリーながら、昔書いたラブレターのようで恥ずかしいもの。
その後、時系列で追いかけたり、矛盾を探したりした。

秒速の舞台の写真は今でも撮ったりしているが、久しぶりに何か書いてみよう。

岩舟と種子島を結ぶ文通は自然消滅のように途絶えた。
貴樹、明里、どちらかの意志で手紙を書くことを止めたのでは無さそうだ。
第３話「秒速５センチメートル」内、One more time one more chanceの音楽と共に貴樹と明里のそれぞれの生活が垣間見える。
セーラー服姿の明里が郵便受けを覗き込み、届かない貴樹の手紙に溜息をつく。
一方、貴樹も届かない明里の手紙に浮かない表情を見せる。
明里の中学校の制服はブレザーだった。
それは、大きな桜を背景に岩舟駅のホームで春と貴樹が待ち遠しいという明里の姿がブレザー姿であり、部活が忙しく電車内で手紙を書いている明里、一人でドア前に立ち外を眺める明里の後ろ姿もブレザー姿だった。
そして、高校に進学した明里の制服はセーラー服となる。

貴樹と明里の文通は中学時代は続いていたようだ。
高校入学後のやりとりは分からないが、少なくとも来ない手紙に悲しみを覚えたようだ。
さて、文通の経験は殆ど無いのでが、自分が手紙を出さないのに相手からの手紙が届かずに悲しむケースというのがあるのだろうか？

自宅の郵便受けの前で悲しむことは無くなり、二人はそれぞれ郵便ポストの前で心を揺らす事となる。皮肉なことに横には異性の友達がいる。

本来なら自分が出すべき順番ながら出すことが出来ない自責なのか。
それとも、順番を変えても不通となった文通を再始動させてみる勇気が無いのか？不通となった理由を知る事が怖いのか。

作品内では本文が全く書けずに突っ伏す明里の姿が映されている。
だから明里が文通を止めたと決めつける事は出来ない。
明里は何とか書き上げて出したかもしれない。

常に一緒に居て、桜の花びらの落ちるスピードや宇宙の年齢、銀の溶ける温度なの二人がこれから生きていく為の準備をしていた小学生時代。
離れ離れの３年間はお互いのスピードを相手と同調させる事を困難にさせた。

何を書いたらいいのだろうか？

あの踏切の再会は本当にあったのだろうか？
こんな事を考えたこともある。
あのシーンの女性は間違いなく明里でしょう。

しかし…

踏切ですれ違った際、貴樹ははっと目を見開き、口を開く。
すれ違った女性も、一瞬目を見開き口を薄く開く。
そして、遮断機の向こうで立ち止まり、ゆっくりと振り返る。
気が付いている。

この時の踏切の不思議な出来事は記事に何度か書いた。

こころが見つからない
秒速５０００センチメートル

車両の編成数だったり、警報が鳴ってから電車が到達するまでの時間であったり。さらには明里と思われる女性が立ち止まっていた場所から見えなくなる角の向こうまでの距離を走ったのか？など。

そして、もう一つ見つけてしまった。
二人の間を通過した２０両編成の小田急線。その編成数も驚愕だが…、その下り電車の行き先表示は「新宿」だった。

逆じゃないか！

明里が立っていたら、それは貴樹の生きる歩みを逆行させる事。
「中１の３学期の冒険」への逆戻り。

決して、明里も過去への逆行を選ばずに歩き出した貴樹に対して
あの頃と今の明里がきっと言っているはず。
「大丈夫」

余談だが、山崎まさよしさんの「One more  time one more chance」のPVにはちょっとした仕掛けがしてあって、違うエンディングが用意されている。

ただ、単にエンディングが違うだけなく、通過していく小田急線も違う。
映画内ではまず上り電車が通過して、その後下り電車が通過していった。

山崎さんのPVではまず、下り電車が来て、その後上り電車が通過していく。
これで、上記で申し上げた「下り電車なのに新宿行き」は解消された。

しかし・・・

但し、走っている線路がおかしい。右側走行となっている。
おまけに、車両によって「急行」と「普通」が混じっている模様。

最後に
この映画を観て、桜の花びらが舞い落ちるシーンを何度も眺めた。
だけど、一度たりとも秒速５センチメートルで落ちてきたことは無い。

多分、秒速５センチメートルで舞い降るのは特別な思いと思い出の中だけなのでしょう。