復活か幻影か [ライフ]
地元にあった洋菓子屋さん。
それこそ、このおっさんが物心ついた時からあの小さいが交通量が多い交差点の角にあった。
市道拡張工事計画があり、徐々にバス通りに面した建物が少しずつ引っ込んでいく。
その店も歩道ギリギリまで面していた店を少しひっこめながらリフレッシュオープンした。まあ、それも随分と前の話であり、市道の拡張はまだしておらず、JRの駅へとまっすぐバス通りは駅前のスクランブル交差点と高架化していない私鉄の踏切がすぐそばにあり、すぐに渋滞する。まあ、それでもインターチェンジから出てきた車が北へ上がっていくにはこのバス通りを進まなくてはならなかったが、私が卒業した小学校のすぐ脇を抜ける新しい道が出来てからはほんの少しマシになった。
そこにあった洋菓子店が昨年、突然閉店した。お店はその交差点にある本店以外にも市内外に数店舗あったが直営店すべてが閉店となった。翌日の閉店を告知して、それを知った多くのファンが特に代名詞ともなったモンブランを求めて最終日に店に駆け付けた。少なくとも、客側にも従業員側にも不義理はしなかった。
地元の店であり、当たり前のようにすぐに買えたし、アド街で取り上げられたときは自分が知っている以上にすごい経歴の方が店を立ち上げられたんだと知ったし、放映直後の来客数には少々驚かされた。
小さい交差点ながら交通量が多く、3台かな?わずかな駐車スペースしかなく、交差点で駐車場に並ぼうとする輩がいるから困ったもんだと眺めていたのが数年前。
多くの方が喪失感を覚えていた中、もともと噂されていたことだが、経営者が変わり従来の従業員、職人のまま再出発すると。
お店の名前も変わったが、それまでの店名を織り込んだ。
新しい店の開店は知っていたが、まだ訪れていたなかった。
そのあたりの気持ちは以前のブログに書いたことがあり、訪れるのに躊躇があった。
そして、買いに行った。
社会人として会社で働き、仕入があり在庫があり、運送があり、人件費など経費があり、保険があり、宣伝があり・・・会社・店を維持していく上での活動については少しは知識がある。
経営者が変わったのは、委譲ではなく、やはり経営難であった模様。
ただし、新しい経営者もしくはオーナーが店を再出発させた。
新しい看板を掲げ、それまでと同じ従業員を雇い、それまで代名詞となっていたモンブランをはじめ多くの洋菓子を作ることが出来る職人さんも。
これまでと同じものを提供してくると聞いている。
ならば・・・それまでと全く同じことをしているならば新しい経営者は利益を上げることが出来るのか?
・以前よりも人を雇うという事が経営環境的には厳しくなっている。給料や時給、待遇面。
・以前よりも材料費が上がっている。
他にもいろいろとあるだろう。
となると、やっぱり何かを変えないと店は継続していけないはず。
・従業員の減員
・給与面の変更
・材料の変更
・生産量の減少による廃棄リスクの減少
もしかしたら、新経営者はこの洋菓子店の熱烈なファンであり、他に利益を上げる事業を展開しているので、洋菓子店の損得などまったく気にしないくらいの御仁かもしれない。まあ、そんなことはないだろう。
従業員を減らしたり、給与待遇を悪化されたりすればモチベーションは下がる。
材料の変更について舌の肥えた客側があれ?と思い始めるかもしれない。
廃棄リスクの減少のために店頭に並べる個数を減らせば、売上機会を失うかもしれない。
もう、ここまで書いて気が付かれているかもしれないが、今回の記事に店名を書いていない。
前のお店は幼少期の思い出とともに、改装前の昔ながらのたたずまい、今の駐車場側に向いていたショーケースに並んでいた風景。モンブランや誕生日のホールケーキの奥底にある色々な思い出がそこにあった。
前の店名を織り込み再出発した店を訪れて、買い物をした。いや、試していたのかもしれない。
味ではない。
店に力を感じない。
今では簡単にケーキをコンビニでも買える世の中になったけど、ショーウィンドウ越しにケーキを選ぶ、至福の場所でもあってほしい。
もしかしたら、他の店は違うのかもしれない。
私が訪れたタイミングが悪かったのかもしれない。
元々の店から引き継いだ味を守るために、多くのものを削ったのかもしれない。
ただ、これでかつてのお店と思い出を昇華し、今の店にその高いハードルを押し付ける気は消えた。
地元で再出発をする非チェーン店企業を応援する気持ちはある。
もう少し見守って
もしかしたら、思い出が顔を出すことを期待しています。
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