僕の生きる道 タクトを託され [中村先生と共に生きる人々]
いつの間にか三部作になっていた「僕道」シリーズ。
間もなく完結編「僕の歩く道」が放映されます。
シリーズの原点とも言える「僕の生きる道」は2003年の1月から放映されました。
余命一年を宣告された高校教師、中村秀雄。直後は自暴自棄になるが、やがて担当医の言葉や、当時病気のことを知らなかった母の言葉に、彼は最後まで生き続ける決意を固める。
誰にでも訪れる死が、普段の生活の中では忘れがちとなる。死を認識する事により、生きることの尊さを知った中村秀雄は、周囲の人々に支えられながら懸命に、全力で日々を過ごす。その姿を見て、周囲の人々も命の尊さを再認識していく。
そんな、中村先生のそばにいて共に生きた人々をクローズアップしてきましたが、彼の教え子の中でキャラクターが成立している最後の生徒、吉田均君を取り上げたいと思います。
中村先生(草彅剛)が担任をしていた2年G組(後の3年G組)の中でも成績は常にトップクラスだった吉田均君(内博貴)。
彼にはお兄さんがおり、キャリアの道を進んだようです。その兄との比較され、当たり前のように弟、均にも高級官僚になるように期待されています。そのプレッシャーは吉田均君をがんじがらめにします。
大学受験に必要の無い授業、当時無気力だった担任の生物の授業は内職にあてる絶好の時間。吉田均はクラスメイト同様、受検科目の参考書を開きます。
さらには、もっと集中して勉強したいが為に仮病を装い、保健室に参考書を持って向おうとします。
赤坂栞の指摘に悪びれる様子もなく、彼は仮病の上の「内職」を堂々と答えます。
3年生へと進級した際に席替えとなり、吉田君はなんと一番前のど真ん中の席を割り当てられます。
先生の声が勉強の邪魔になると考え、彼は席を勝手に一番後ろに持っていき、他の生徒、田中守(藤間宇宙)とトラブルになります。
彼は焦っていました。そして、それを田中守に指摘され喧嘩となりました。誰が見ても吉田均君の行動が問題ありと思います。
陽輪学園の中でトップクラスでも、彼の目指す頂は高い所。
帰ってきた模試の結果を見て愕然とします。その焦りは彼の集中力を散漫にさせ、家族や級友の目を気にして悪循環へと陥ります。
この頃の中村秀雄は余命宣告を受ける前の無気力な状態でも、宣告を受けた直後の自暴自棄の状態でもなく、与えられた命を大事にし、最後まで教師として教え子達に大切な事を説こうとしていました。
同僚の国語教師であり、陽輪学園理事長のひとり娘の秋本みどり(矢田亜希子)と交際し同棲を始めた中村先生は大学受験の為だけに大切な高校生活を使っている生徒達に、何か足跡を残せるように・・・、家族の期待という呪縛を受けていてる吉田均に何かを感じてもらいたくて、みどりと相談の上、合唱を始めようと提案します。
大学進学をやめ、歌手を目指す杉田めぐみ(綾瀬はるか)が当初から合唱に参加します。その後、盗撮を杉田めぐみに見つかり弱みを握られた田中守が参加します。でも、田中君は嫌々参加したのでしょうか?ちょっと興味があったようです。どうしようかなと思っている時に、偶然のきっかけで彼は参加を余儀なくされました。
指揮者中村秀雄、伴奏秋本みどり、合唱はめぐみと守の4人だけの寂しい合唱の練習がしばらく続きます。
めぐみはともかく、歌も決して上手とはいえない田中守も受験勉強以外に何かをすることに、楽しみを知ります。吉田君だけでなく、クラスメイトの殆どが受検というプレッシャーの中で戦っていました。田中君も2年生の頃、万引きを見つかり、3年生になり螺旋階段の下でデジタルカメラを利用し、女子生徒のスカートの中を盗撮し、それを杉田めぐみに見つかります。
でも、合唱を始めた後の田中守君を見ていると、そんな過去があったことなど忘れてしまいそうな、素晴らしい男になって行きます。
杉田めぐみと田中守の楽しそうな雰囲気に、クラスメイトの中でも仲の良い連中がその変化に気が付きました。
朝のホームルームで突然、中村先生と秋本みどり先生の結婚が発表されます。全く、それに気が付かなかった生徒達は驚きます。
生徒達が2年生の頃の中村先生のイメージも強く残っていたので、みどり先生にはもったいないと最初思ってしまいました。
「みどり先生なら、もっといい人と結婚できたのに」
この言葉がちょっと前までの中村先生の印象を表現していました。
でも・・・
「いいじゃん、中村 ―」
鈴木りな(浅見れいな)のこの言葉から生徒達が話しているうちに、実は中村先生はそこに集う生徒達の殆どに親身になって相談に乗っていたことが分かりました。
鈴木りなの赤井先生(菊池均也)への叶わぬ恋、杉田めぐみの歌手への夢への応援、赤坂栞(上野なつひ)の父親の事業悪化の家庭問題、田岡雅人(市原隼人)と近藤萌(鈴木葉月)の妊娠騒動・・・
生徒達は次第に納得し始めました。中村先生の病気を知らない生徒達は2年生の頃の無気力な中村先生ではなく、生徒達の事を親身になって考えてくれる中村先生に気が付きます。
当初から中村先生に何かを感じていた杉田めぐみは嬉しくなってきます。
「うん。似合ってるよ、中村とみどり先生」
最後にはこの言葉へと変わりました。
そして・・・じゃあ、合唱がどんなもんか試しに参加してみようかと田岡・近藤・鈴木・黒木愛華(岩崎杏里)が加わります。
そして、その輪は生徒達にどんどん、広がっていきます。
吉田均を含む一部の生徒達以外、クラスの殆どが合唱の練習に加わりました。休み時間など、合唱の話をしている彼らは楽しそうでした。
そんな姿を見て、吉田はそんな無駄な時間があるのか?と言い放ちます。でも、そんな彼らを羨ましく思っている部分に自分でも気が付き始めました。
でも、受験生の部活動がPTAの間でも問題になり始めました。PTA会長の田岡雅人の母を中心に活動中止を要請に来ました。
合唱の練習を始める前、職員室で合唱の存続について話し合っている最中に中村先生は倒れてしまいます。
そして、生徒達は中村先生の病気の事を知ってしまいます。
合唱が続けれない事実と、それ以上に中村先生の身体、そして中村先生の言動が生徒達の心に訴えかけます。
合唱に参加していなかった赤坂栞を含め、生徒達は緊急入院して意識不明の中村先生に向って、隣の公園から合唱歌「のばら」を捧げます。
塾に行くと別行動していた吉田君もそっと、公園の外からその様子を見ていました。
彼らの歌声は中村先生を呼び戻しました。
退院後、生徒の前に現れた中村先生は自分の身体の事を話し、そして引き続き合唱をしようと言います。
合唱を諦めかけていた生徒達は驚きます。
しかし、中村先生はそれに条件をつけます。
今後、模試でA判定を取り続けること。これが合唱存続の条件だと。
これを聞いた生徒達は、喜びも束の間、落胆します。
誰が考えても、無理難題だったのです。
しかし、田中守の一言で生徒達は立ち上がります。
何もしないで諦めていいのかと。
合唱を通じて、日々の生活を通じて、中村先生の思いは生徒達に通じていました。彼らは、受験勉強と合唱の両立に挑戦します。
モチベーションを持った生徒達の集中力は素晴らしいものがあり、彼らの高校生活は既に充実し始めました。
しかし、合唱に参加していない吉田均君は勉強机に向っても、全く頭に入らず、すぐにベッドに寝転びます。
ますます、吉田君は悩み始めます。
彼はクラスメイトとの溝にも悩みを覚えているようです。
昼休み、屋上で菓子パンと牛乳パックで食事をしていると久保先生(谷原章介)がやってきます。
吉田均から見ても頭脳明晰でスマートな久保先生。
「勉強、うまくいかないか? 頑張っても、うまくいかない時って、あるんだよな」
「・・・久保先生でも、そういう時、あるんですか?」
「あるよ」
吉田君にとって意外な回答でした。久保が和ませようと冗談を言っても、今の吉田君には通じない部分がありました。それだけ、心に余裕が無かったのです。
吉田君は救いを求めるつもりで久保に言います。
「・・・僕、絶対、官僚にならなきゃいけないんです」
「へえ。なりたいんじゃなくて、ならなきゃならないんだ。でも、おまえがそれでいいなら、いいんじゃない?」
アドバイスを期待していた吉田君は釈然としませんでした。
吉田君を残して、久保先生は校舎に戻ろうとします。でも、思い出したように吉田君に言いました。
「あ、そうだ。 中村先生が合唱やろうと思ったきっかけは、おまえなんだぞ」
久保先生が残した言葉は吉田君の心の奥底に隠していた気持ちをゆさぶります。
誰もいない体育館でそっとピアノの鍵盤を指一本で叩いてみたりします。
心に迷いを持ったまま運命の模試迎えます。
事前に、中村先生から吉田君もA判定を取ってくださいと言われていました。合唱に参加していないから関係無いといいつつも、気にはしていたでしょう。
そして、模試の結果が返ってきます。
一日の授業も終わり、教室に中村先生と副担任のみどり先生がやってきます。
結果は全員A判定でした。
教室は歓喜に包まれ、吉田君も静かなガッツポーズを見せます。
果たして、PTA会長の田岡さんと教頭先生の約束に合唱には参加していなかった吉田君も対象に含まれていたのでしょうか?それとも含まれていなかったのでしょうか?
でも、彼が垣間見せた笑みの中には久しぶりに納得できる成績を取れたという自分自身のことだけでなく、やはりみんなとA判定を取りたかったという気持ちがあったのでしょう。
合唱の存続が決まり、生徒達は教室を飛び出し螺旋階段を駆け上がります。
勿論、思う存分合唱の練習をする為です。これで、次の判定模試までは合唱を続けられます。
教室には吉田均君だけ一人残っています。
充実した気持ちではいましたが、やはりクラスメイトから取り残された気分で一杯です。本当は一緒に合唱してみるのもいいのかな・・・。いや、中村先生が言っていたな。合唱である必要はないって・・・。それが少しずつ理解して来た吉田君でした。そう、久しぶりにピリピリした雰囲気はありませんでした。
しかし、合唱なんてする時間など無いと言った手前、みんなと合流することが出来ません。
そして、事件が起きます。
赤坂栞さんが教室に残る吉田君に声をかけます。揺れる自分の気持ちを抑えて、吉田君は塾に行くと教室を出ようとします。赤坂さんは吉田君に
「素直じゃないね」
と確信を突いた声を投げます。吉田君は
「お前に言われたくないよ」
と答えますが、赤坂さんは突如、吉田君の頬に口付けをします。呆気に取られる吉田君、
「したいからしたの。文句ある?」
と言って赤坂さんは去って行きました。
赤坂さんの記事でも書きましたが、これは予想外でした。そう言えば、赤坂さんのお父さんの事業がちょっとうまく行っていない頃、赤坂さんは希望の私大に進学出来ないかもしれないので荒れていた時期がありました。両親の争いを停める為間に入った赤坂さんは額に怪我をしてしまいました。絆創膏を額に入ってきた赤坂さんを見て、勉強勉強でピリピリしている吉田君でさえ心配して、どうしたのか聞きますが、赤坂さんはそれに『隕石が振ってきてぶつかったの』と答えます。
この二人の関係は僕には解りかねます。でも、赤坂さんの口づけが、吉田君の背中をそっと押したようです。
模試の結果を聞きにきたPTA会長は合唱存続を認めながらも、中村先生が教壇に立ち続けることに不安を訴えます。
古田教頭は嬉しそうに合唱の練習をし、充実した高校生活を中村先生のもとで過ごしている生徒達を見せて納得させます。
田岡夫人も納得し、二人は体育館を後にし、階段を降りていきます。
緊張しながら階段を昇る吉田均君とすれ違います。
窓から差し込む明るい光の中、その吉田君の後姿をみつめる古田教頭の優しい表情が印象的でした。
吉田君の戦いは続きます。
中村先生にもクラスメイトにも悪態をついたのに、自分も合唱に参加したいなんて簡単には言えません。でも、この頃の吉田君は自分の心に素直になっていました。
― 合唱がしたい。みんなと一緒に何かをしたい ―
軽く手を握り締めながらどうやって許しを得ようかと悩みながらゆっくりと吉田君は皆に近づきます。
合唱の練習の最中で、中村先生は指揮をし、みどり先生はピアノの伴奏をしていました。
まず、歌っている生徒達が、吉田君に気がつきます。
驚いている生徒達の様子に何かを感じた中村先生が振り返り、みどり先生も吉田君に目を向けます。
みんなの歌声は止まりません。中村先生の指揮もみどり先生の伴奏も止まることなく続きます。
合唱の練習を中断して、吉田君どうしたのですか?とか、合唱に来てくれたのですか?とか言う必要はありませんでした。
中村先生の指揮する両腕のうち、右腕が皆に加わりなさいと自然に手招きします。そう、中村先生が幼少時代、いじめを受けて教会の合唱を眺めていたときと同じように・・・。
生徒達は場所を詰めあって吉田君の立つ場所を作ってあげます。初めて歌う吉田君の為に、言い争いもした田中守君が楽譜を渡します。赤坂さんをはじめ皆嬉しそうな表情を見せます。
でも、合唱はそのまま続きます。
初めから吉田君がここにいる場所は用意されていました。いつでも帰ってこれるように中村先生もクラスメイトも待っていたのです。
中村先生の両腕が大きく振られます。ここに教師としての中村秀雄が完成に近づきます。
ドラマはここまでじっくりと作られていましたが、梅雨時、夏、初秋、晩秋へと一気に流れます。
この間に中村先生とみどり先生や生徒達が何をしていたのか見てみたいと思いつつも、吉田均君が合唱に参加したことで、両親や兄達の期待に押しつぶされる事無く過ごしているだろう吉田君は想像出来ます。
だから、それまでのような波乱万丈は無かったのでしょう。
でも、時間の経過は中村先生の病気の進行も意味します。
ただ合唱をするだけでなく、合唱コンクールへの出場を目指していた中村先生と生徒達はあの模試以降も、合唱と勉強の両立をしていきます。
彼らは、受験勉強の試験科目だけでなく、それ以外の科目の授業もしっかりと聞きます。彼らの高校生活は間違いなく豊かなものとなっていきます。
そして、合唱コンクールは選抜予選を突破し、本大会出場を果たします。
3年G組の生徒達は模試の結果をそのままに次々と第一希望の大学の合格を果たします。合格者は続き、あと一人の合格が決まれば、完全制覇となります。
その一人は・・・吉田君でした。学力から言えば普段通りの実力を発揮すれば全く問題無いはずです。そう、普段通りの実力が出せれば・・・
職員室で吉田君の報告を待つ、中村先生とみどり先生。
沈痛な面持ちで職員室に入ってきた吉田君の報告は不合格でした。吉田君は滑り止めの受検をしておりません。中村先生は来年の合格を目指すようにやさしく言います。
しかし、吉田君は不安がっています。今回の不合格は仕方ないにしてもその原因が本番に弱い、緊張してしまうと自分でも分かっているのです。
教室で吉田の帰りを待ち、明後日の合唱コンクールの予選に向けて練習をしようと守やりな、めぐみ、萌が話をしていた。
めぐみは歌手を目指し、他のみんなは第一志望の大学に合格していた。
そこに中村先生への報告を終えた吉田君が入ってきます。
「ごめん、落ちた、大学」
皆驚きます。みんなは中村先生とは違い、何て声をかければいいのか分かりませんでした。でも、吉田君は笑顔を見せます。
「でも、落ち込んでられない。まだ、合唱があるから」
本番の弱さ、プレッシャーに弱さは来年の受検への不安として残ります。でも吉田君は間違いなく、成長しております。
そんな吉田君に更なる試練が待っています。いや、授業なのかもしれません。
明後日の合唱コンクールの予選に参加したG組の面々。発表が終わるか否かという時に壇上で中村先生は倒れます。意識を失った中村先生は救急車で敬明会病院に運ばれ、担当医の金田勉三(小日向文世)によって一命を取り留めますが、胃からの出血を止める事が出来ません。金田は中村先生の家族、そうみどり先生に心の準備をしてくださいと伝えます。もう、中村先生は病院から出ることは出来ません。
病院で動揺している生徒達に麗子先生や久保先生が落ち着くようにいいます。そしてアナウンスが流れ、陽輪学園は決勝に進出できたことを告げています。
しかし、指揮者の中村先生はもうタクトを振ることは出来ません。中村先生に付き添う為に伴奏者として参加することも出来なくなりました。
3Gの面々は生徒達だけで決勝に臨む事になります。
病院で奇跡的に意識を取り戻した中村先生は見舞いに来てくれた先生方にお礼を言います。もう、教壇に立てないことは中村先生が一番良く分かっていました。
でも、中村先生にはどうしても心残りがありました。教え子達はこの一年で立派に成長しました。しかし、吉田君の精神面の弱さを克服させたかった。希望の大学へ入学するのを見届けたかった。
中村先生は久保先生に「タクト」を渡します。吉田均に決勝では指揮をするようにと託しました。
それを聞いた吉田君はうろたえます。無理だ。指揮棒を振ることは見よう見まねで出来る。しかし、本番に弱い。また、失敗するに違いない。
久保は吉田君に、G組のみんなに声をかけます。
「みんな、自分のためにしっかり歌えよ。それからもう一つ、中村先生のために ― 」
吉田君は託されたタクトを握って、一人夕方の校舎の廊下で指揮の練習をしています。
そして、決勝の日となりました。直前の練習では案の定、指揮はボロボロです。吉田君も、無理だと投げ出したくなります。しかし、他に指揮者はいません。中村先生が吉田君に託したのだから、クラスメイトの皆は他に指揮者を立てるつもりはありません。
時間は待ってくれません。陽輪学園の出番となりました。
ステージに上がります。アナウンスの声が合唱のスタートを促します。
しかし、指揮者の吉田君はタクトを頭上に上げることが出来ません。完全に固まってしまいました。会場がざわめき始めます。
G組の他の生徒達は吉田君に声をかけます。もう、ダメか・・・。
その時、中村先生が客席に現れたのが見えました。杉田さんも気がつき、思わず 「あっ」と口にしてしまいます。
その声に吉田君も振り向くと中村先生が吉田君をみつめ大きく頷きました。
担当医の金田は中村先生の外出を許しませんでした。でも、中村先生は最後まで教師でありたい。ただ、そこに居るのではなく、最後まで生きたいと、無断で病院を抜け出します。文字通り命を削りながら決勝の会場まで来ました。
中村先生の目に吉田君は覚悟を決めました。
ちょっと、速いテンポながら見事に振り切った吉田君には清々しさと、自信が湧き出していました。
中村先生が最後まで気になって気になって仕方が無かった吉田君はもう安心して見ていられました。
最後の授業を終えた、中村先生は会場の客席で立派になった生徒達の姿を思い浮かべていました。
まだ、客席に中村先生がいることを知ったG組の生徒達は、卒業式には出席できないであろう中村先生の為にもう一度ステージに上がります。
吉田均君はさっきの指揮とは比べ物にならないような立派な合図で仰げば尊しが始まりました。
中村先生はその歌声の中、安心してやっと教師から解放され、自分の事を考えます。そして、病気を知ってから今までいつもそばに居たのはみどり先生でした。みどり先生との思い出の中で、秀雄は静かに旅立ちます。
中村先生の最後の教え子達の中でも、最後まで面倒をかけた吉田均君。仲間達から一年遠回りをしましたが、5年後逞しい表情で彼は帰ってきました。
彼は官僚にはなりませんでした。
陽輪学園の生物教師となっていました。
吉田君は、官僚にならなきゃいけなかったのでしょうか?
勝手にそう思い込んでいたのかもしれません。
恐らく、一浪後に希望の大学に入学してから、生物教師になる事を決意した後、吉田君は両親に説得をしたはずです。でも、意外と簡単にOKが出たのかもね。おお、均が自分から何かをしたいと言ったのは初めてだぞ!なーんてね。
自ら生きるべき道を見つけた吉田君、その姿を安心して中村先生はみつめているはず。
とってもよかった。
泣きそうになりました。
良い文章をありがとう。
by 夏木 (2006-10-17 19:31)
夏木さん、初めまして。
最近は放映中の僕の歩く道に注目ですが、このシリーズの原点は僕の生きる道。みんな、僕生きを観てくれたらいいな。
また、お立寄りください。
by maeboo. (2006-10-17 22:15)